池上の家 / House in Ikegami

設計 ship architecture / 中村俊哉+藤井愛
構造 鈴木啓 / ASA
施工 小泉木材

設計期間 2014年8月〜2015年2月
施工期間 2015年5月〜2016年2月
構造   木造
敷地面積 120.29㎡
建築面積 70.86㎡
延床面積 112.96㎡

住まいの環境デザイン・アワード2017 優秀賞

architect:
ship architecture / toshiya nakamura + ai fuji
structural design:Akira Suzuki / ASA
constructor:Koizumi Mokuzai

design:2014. 8〜2015. 2
construction:2015. 5〜2016. 2
structure:wooden
site area:120.29㎡
building area:70.86㎡
floor area:112.96㎡

photo:Takumi Ota (1-11), ship architecture (12-13)
敷地周辺は門前町の名残りか、マンションや建売住宅に更新されつつも町家型の商店や木造の町工場がまだ少し残っているエリアである。
通りに面した土間の店先や町工場の吹抜空間、家と家の隙間が庭のように現れている場所など、まちに残るそれらの要素があいまって、高密度ながらも抜けのあるおおらかな雰囲気をつくっている。
この住宅では住宅のなかにまちのスケールや言語と連続する場をつくることで、敷地を超えてまちの質そのものに住まうような、空間的・精神的な広がりのある住宅を目指した。

敷地は11m角ほどのほぼ整形地で北側接道以外の3方は建物に囲まれた場所であった。建物のまわりに隣地側の空地と合わせて1.5m〜3.5mほどの幅の空地をとるように、4.5間x4.5間(8.190x8.190)のボリュームを配置した。
この隙間以上庭未満の帯状の空地は、「路地庭」として家の内部や隣地、通りの環境を明るく風通しのよいものにしている。
ちいさな路地庭からアプローチし室内に入ると、隣家の軒高と同じ天井高さ(4.850m)の土間の空間になっている。通りに面した北側には上方に大窓、東側には路地庭越しに隣家の白壁を背景とした横長の窓、マンションに面した南側には天井高いっぱいの縦長の窓を配置し、周辺の視線を交わしながら開放感あふれる空間となっている。

土間に面したメザニンは、来客など時宜にあわせて使えるようなフロアとして計画された。商店街を見通す大きな窓を持ち、現在は住人の変化によりアトリエ・オフィスとして使われている。
そしてこの家をつらぬく直線階段は「屋根庭」へとつながっている。
屋根庭には小屋が建っており、ここが家族の寝室となっている。都市の高密度な住宅地においては地上でゆったりとした庭をもつことはとても困難だが、屋根庭であれば建物の大きさまるごとが陽当りの良い庭となり、大きな庇や機能(寝室)が庭を実際的な居場所として機能させる。

大きな気積の土間空間は、ちいさな路地庭に向かってひらくことで環境的・社会的に心地よくまちと接続する。一方で、光や水を浴びたり土に触れたりといった自然で根源的な欲求を屋根庭が受けとめる。
2つの異なる性格の庭と土間が相互補完することで、周辺環境の変化に左右されない普遍的な強さを備えた住宅の可能性を考えた。

また、土間空間のおおらかさを活かしてオルタナティブスペースとしての活動を行っており、演奏会やアーティストの個展・滞在制作や料理教室などを季節ごとに開催している。イベント時には路地庭からふらりとお客さんが入ってくる。お寺の本堂からジャズ演奏が聞こえてきてふらりと立ち寄ったりする体験が日常にあるこのまちで、併用住宅とは異なるあり方でいわゆる「家開き」がごく自然と始まった。家という日常の場を通してアートに触れる機会をつくる、住宅の新たな試みの場にもなっている。
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